手元供養編【第8話】「ここにいた」

父と母を、小さな瓶に納めて
家へ連れて帰った娘さん。

すぐに次の場所を決めることはせず、
しばらく一緒に暮らすことにしました。

そんなある日、
いつものように庭へ出てみると――。

「……ここに、あったんだ」

小さな瓶と一緒に暮らし始めて、
しばらく経ったある日。

いつもの庭で、
娘さんの手がふと止まりました。

目の前にあったのは、
お母さんがいつも手入れしていた木。

遠くに新しい場所を探さなくても、
大切な人を想える場所は、
すぐそばにあるのかもしれません。

まだ、何も決めていません。

でも、それでいいのかもしれません。

急いで答えを出さず、
一緒に暮らしながら考えていく。

それもまた、
供養のかたちのひとつです。

― 手元供養編 おわり ―